お参りの時にありがとうと一緒に添えられる和菓子。
そこにはお菓子の数だけ素敵なストーリーがありました。
普段はなかなか見られないお坊さんの毎日を少しだけのぞいてみましょう。

仏間でのお参りを終えると「お茶をどうぞー」と少し離れた場所から声がかかる。その声のしたリビングダイニングに赴くと、目の前のテーブルの上にはランチョンマットが敷かれ、その上のお皿にお菓子がきちんと用意されている。

福岡千鳥屋の『千鳥饅頭』そして、写真を撮ると言ったらおまけでつけてくれた、チロリアンだ。奥さんはカウンターキッチンの向こうでかちゃかちゃと食器の音を鳴らしながら、お茶の用意をしてくださっている、というのがいつもの光景である。お茶の支度を終えた奥さんも椅子にすわり、にこやかにおしゃべりを始める。

「孫が、NHKの朝ドラに出演中の松坂桃李に見えるんです」

写真館で撮った成人式の記念写真を見せてもらうと、確かにそう見えなくもない。

「身内びいきですかね」と奥さん。

「いやいや、雰囲気似てますよ。」と、ぼく。

続いてご主人とお孫さんが二人で沖縄旅行に行った際に撮った写真も見せていただく。短い間に、二度もお孫さんの写真を見せてくださるなんて、彼女にとってお孫さんは本当に桃李くんなのだ。

「最初見た時、これ、主人かと思ったんです。貸してもらったのか主人のサングラスをかけていて、だから主人に『本当に○○(お孫さんの名前)なの?』って、聞いたら、『うん、そうだよ』って答えるんですよ。」と奥さん。

それを聞いたぼくが、すかさず「お孫さんがご主人に似ているなら、ご主人も松坂桃李ですよね。」と言ったら、「いや、全然。」と、即否定されてしまった。うーん、なんとも難しいおばあちゃん心理なのであった…。

2018.03.22

 


大江英崇さん

福岡県豊前市賢明寺僧侶&ローカルWebメディア「ぶぜんらいふ。」編集長。